【猪目洞窟】黄泉の国へ繋がる洞窟とは?歴史・見どころを出雲へ現地調査してきた

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島根県といえば、神話と歴史の残る観光名所として「出雲大社」が非常に高い人気を得ていますが、その近辺に「猪目洞窟」というミステリースポットがあることをご存知でしょうか?

かつては黄泉の国への入口と呼ばれた「猪目洞窟」は、地元民からも恐れられていましたが、実は古代出雲の歴史と結びつきのあるスポットでもあるのです。

今回はそんな猪目洞窟を現地調査してきましたので、前半はその歴史、後半は実際の猪目洞窟を回る際の見どころやアクセス方法などを細かく解説したいと思います。

島根県・猪目洞窟とは?

猪目洞窟は出雲大社から約10キロほど北にある洞窟で、幅・奥行共に約30mほどの深さを誇り、東向きに開いた形をしています。

後ほどご紹介しますが、猪目洞窟では多数の出土品が発掘されており、今から1300年前に書かれた「出雲風土記」にも当時の記録が描かれています。

それによると、猪目洞窟は「あの世とつながる場所」、「夢で見たら死に至る場所」と伝えられており、別名「黄泉の穴」と呼ばれ人々から恐れられていた場所だったそうです。

画像:出雲風土記
画像:出雲風土記に記載された黄泉の穴(猪目洞窟)の記載

この背景としては、あの「大和政権」が少なからず関連していると考えられます。

猪目洞窟のある出雲は大和政権から恐れられていた?

島根県古代文化センターの研究員・瀧音能之の著書「古代出雲を知る辞典(2010)」によると、大和から見た北西(乾の方角)は死者の国と考えられていたそうです。

そしてその方角には出雲の地があり、この猪目洞窟もそれに該当します。

また、以前に別の記事でもご紹介しましたが、当時の日本では下記のような考えが広まっていました。

流行り病は西(出雲)からやってくる

実際に3〜4世紀の日本で疫病が流行した際に、人々はこれを「出雲神・大物主神」の仕業と判断したとの記録が日本書紀にも残っているのです。

これらの歴史が指し示すように、当時の人々が猪目洞窟を含む出雲の地を恐れ、日本でも特殊な土地柄だったことが分かりますね。

関連記事:【民俗学】日本に伝わる不思議な風習・行事14選!道端のアレは〇〇だった…【随時更新】

猪目洞窟はどうやって出来た?

猪目洞窟は火山の噴火による堆積物によって出来たといわれています。

かつてはその堆積物が緑色を帯びていたことから、「グリーンタフ」と呼ばれていたそうです。

猪目洞窟の出土品と当時の暮らし

猪目洞窟近辺では、1948年に漁船の船着き場として利用するために堆積土を取り除いたらしく、その際に下記のような出土品が発掘されました。

  • 縄文時代中期の土器片
  • 貝輪をはめた弥生時代の人骨
  • 木の棺桶に入った古墳時代の人骨
  • 須恵器と共に埋められた人骨
  • 木製品、土器、骨角器などの道具
  • 鳥類、魚類、獣類、貝類の骨

これらの出土品により、弥生時代から古墳時代後期(2300〜1400年前)に当時の人々が生活していたこと、ここで埋葬を繰り返していた様子が明らかになりました。

猪目洞窟で暮らしていた人々とは?

猪目洞窟の生活は出土品を頼りに推測されていますが、当時島根県で暮らしていた民族からそのヒントを得ることもできます。

この時代の島根県沿岸部では「海人族」と呼ばれる海のスペシャリスト集団が暮らしていたそうなので、彼らがこの洞窟近辺で生活していたとも推測することができます。

関連記事:【海人族】日本の海を支配した集団とは?海人族の歴史や安曇野開拓などを徹底解説

海人族は安定した生活と新天地を求め、沿岸部から山岳地方へ移住して行ったそうなので、もしかすると猪目洞窟の痕跡が古墳時代で途絶えてえるのは、その民族移住が関係しているかもしれませんね。

実際に猪目洞窟に行ってきた

画像:画像:猪目洞窟の入り口

今回は猪目洞窟を実際に現地調査してきましたので、見どころ等もご紹介したいと思います(アクセス方法は次の章で解説します)。

実際の猪目洞窟は人の少ない海沿いの道路下にあり、船着き場の奥側に位置しています。

画像:画像:猪目洞窟の船着き場跡02
画像:画像:猪目洞窟の船着き場跡

洞窟前には漁船の木材がそのまま放置されている様子がうかがえますが、洞窟の奥へは徒歩でアクセス可能となっています。

画像:猪目洞窟の内部

洞窟内は暗く、30mほどの空間が広がっています。

画像:猪目洞窟

特別何がある訳ではないのですが、ここで当時人々が生活していたと思うと、非常に感慨深いものがありますね。

洞窟内にはいくつかの足跡があるため、少なからず今でもここを訪れる人がいることが分かります。

猪目海岸

画像:猪目海岸

猪目洞窟自体は10分もあれば見て回ることが可能ですので、その後はお隣の猪目海岸で休憩することもできます。

こちらは猪目洞窟のお隣(徒歩3分ほと)の場所に位置しており、非常にきれいな浜辺となっています。

この猪目の地域には市営バスが通っていますので、その待ち時間に立ち寄ってもいいかもしれませんね。

猪目洞窟へのアクセス

猪目洞窟へのアクセス方法は、バス、レンタルサイクル、車の3つが挙げられます。

自転車、車の場合は出雲大社前からアクセスするケースが多いですが、道が非常に狭く、事故が多発することがよくあるそうなので、注意が必要です。

もし徒歩の場合は、出雲大社前or出雲市役所から出ている生活バスのご利用をオススメします。

画像:r出雲市役所バス停前

生活バスは数時間に一度だけ運行しており、猪目洞窟まで410円、時間は約40分でアクセスすることが可能です。

自転車でのアクセスも可能

自転車で猪目洞窟へアクセスすることも可能ですが、出雲大社前からの道は大変険しいので、オススメしません。

一番アクセスしやすいルートは雲州平田駅にてレンタルサイクルを借り、平坦な道路と海岸沿いを12kmほど走るルートがおすすめです。

画像:猪目洞窟への道01
画像:猪目洞窟への道02

レンタルサイクルは電動自転車で一日830円となっており、走行距離も出雲大社前からそれほど変わりません。むしろ急な坂道がない分、こちらの方が断然楽ですね。

※このルートの最後の方にある斐川一畑大社街道は2021年現在、冠水により全面通行止めとなっています。しばらくご利用いただけませんので、ご注意下さい。

猪目洞窟周辺の観光名所

画像:出雲大社

もし猪目洞窟へ訪れるのであれば、下記のようなスポットもオススメです。

  • 出雲大社
  • 古代出雲歴史博物館
  • 稲佐の浜
  • 加賀の潜戸
  • 松江城
  • 荒神谷遺跡

などなど、出雲周辺には非常に歴史や神話との関りが深いスポットが多数点在しております。

このサイトではそれらを別の記事で詳しくご紹介していますので、興味のある方は下記もお読みください

関連記事:【島根県】出雲・松江市のおすすめ観光スポット9選をご紹介!秘境から定番まで詳しく解説

猪目洞窟の見どころ歴史・まとめ

以上が猪目洞窟の歴史と概要、見どころについてでした。

猪目洞窟は考古学的にも非常におもしろいスポットとなっていますので、出雲へ観光の際はぜひ訪れてみてください!