【民俗学】日本に伝わる不思議な風習・行事14選!道端のアレは〇〇だった…【随時更新】

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日本の各地域には、古くから不思議な風習や民俗学的な行事が盛んに行われてきました。

それは時に様々な理由で形を変えたり、もしくはそのままの形で現代にも受け継がれているケースなどもあるのです。

今回は、そんな日本に伝わる少し不思議で面白い「風習や行事」などをご紹介していきたいと思います。

大助人形(鹿島神宮)

画像:鹿島神宮の大助人形

藁人形に竹の弓が刺さった奇妙なオブジェクト「大助人形」

その昔、鹿島(茨城)の神様が東北を平定した時代があり、その際に仕えた兵士たちの姿を象っているといわれています。

また伝承によると、かつてはこの様な人形を村や集落の堺に置くことで、厄災や病気などの出入りを防いだとも言われています。

画像:鹿島神宮の大助人形02
鹿島神宮に設置された大助人形

現在でも特定の地域に風習として残る「大助人形」ですが、鹿島神宮にてその痕跡を辿ることができます。

関連記事:鹿島神宮と周辺観光スポットは超壮大!鹿島神宮の見どころ・すごいポイントをわかりやすく解説

ちなみに後ほどご紹介しますが、大助人形のような守り神的概念は、日本各地で見られるオブジェクト「道祖神」とほぼ同じ役割を担っているとも言えます。

大助人形のPoint

  • 特定の地域に残る風習
  • 鹿島の神に遣えた兵士を現している
  • 集落の外から来る厄を祓う

道祖神

画像:道祖伸

道端や村の境目に置かれていることの多いオブジェクト「道祖神」

先ほどの「大助人形」と同様、こちらも村へ入ってくる厄災を追い払うと言われていますが、現在は子供の守り神、豊作、健康など様々なご利益をもたらしてくれると伝えられています。

日本全国で観られる道祖神ですが、その姿は多種多様です。

例えば、人を象った木造の道祖伸、石で作られた道祖神、またこのサイトでは公開できないような形をしたものなど、その形は地域によって異なります。

画像:松本市立博物館に展示されている道祖神
松本市立博物館に展示されている小型の道祖神

また、このサイトでも以前ご紹介した、大深山遺跡がある「川上村」という地域でも道祖神祭りという風習があるため、長野県の様々な地域に分布している事がわかりますね。

関連記事:【大深山遺跡】日本一標高の高い縄文時代の遺跡を長野県で調査してきた

皆さんの住んでいる地域の道端などにも、もしかすると道祖神が設置されているかもしれませんので、機会がありましたら観察してみてください。

道祖伸のPoint

  • 村へ入ってくる厄を祓う
  • 健康や豊作などのご利益
  • 地域によっては形が異なる

こと八日

画像:こと八日

長野県松本エリアに「こと八日(ことようか)」と呼ばれる風習が存在します。

松本地方では農業を始める時期を「こと始め」と呼び、島根県の出雲から疫病神が帰ってくる時期と言われています。

※ちなみに、出雲には旧暦10月10日(現在は11月)に様々な神様が集まる「神在月(かみありつき)」と呼ばれる行事が存在します。

画像:出雲大社
島根県の出雲大社

そして、その疫病神を追い払うため2月8日の「こと八日」に松本市の各地域にて、このような民俗学的行事が行われているのです。

松本市の里山辺地域(さとやまべ)入山辺地域(いりやまべ)周辺では、疫病神や貧乏神を象った馬(ワラウマ)やムカデを藁で造り、念仏を唱えます。

「こと始め」の際にこの行事を行うことで、村から厄災を祓っているといわれています。

画像:草履のこと八日
画像:草履を模したのこと八日

先程の大助人形や道祖伸と非常に似ている風習ですね。

また別の地域では、その日に訪れるとされる疫病を追い払うため、家の入口で「もみ殻」や「コショウ」を焼き、あえて臭いニオイを出していたといわれています。

その他にも藁でゾウリを造り、村の入り口付近の木に吊るす地域など、松本エリアだけでも様々な「こと八日」の風習が存在しています。

関連記事:松本城の内部ってどうなってんの?見どころと不思議スポットを解説

なぜ出雲から疫病神がやってくるのか?

そもそも、なぜ当時の人々は出雲から疫病神が来ると考えるようになったのでしょうか?

歴史評論家・関裕二氏の著書「出雲の暗号」によると、3世紀後半〜4世紀初頭のヤマトにて疫病が広まり、人口の半分が犠牲になった日本書紀に記載されているそうです。

当時の人々は占いを行い、この疫病は「出雲神・大物主神」によるものと判断したといいます。

また、「続日本紀」には、かつて中央アジアで流行った「疱瘡(ほうそう)」とよばれる伝染病が北九州へ渡り、それにより当時の朝廷が大混乱に陥ったとの記録も残っています。

このように、当時の病などは西から運ばれてくる傾向があり、それが遠い地の人々の間では「出雲の疫病神」の伝説と絡めて考えられるようなった可能性があるのです。

この松本地方では、その予防として「こと八日」の行事が行われていることになりますね。

ちなみに、出雲大社を中心とした逸話などについては、下記の記事でも詳しく解説していますので、こちらもお読みください。

関連記事:【解説】出雲大社の観光スポット23選!歴史や周辺の見どころもご紹介!

こと八日のポイント

  • 長野県松本エリアに残る風習
  • 出雲から訪れる疫病神を祓う役割がある
  • 農作が始まる「こと始め」の時期に行われる行事
  • 馬や巨大な草履を模ったオブジェクト

盆踊り

画像:盆踊り

皆さまもご存知の通り、夏の風物詩でもある「盆踊り」

もともと日本のお盆(8月15日前後)の時期は、ご先祖様が帰ってくる日と言われており、それらを供養するための風習・行事として「盆踊り」が行われるそうです。

また一説では、やぐらの周りを踊る人々の姿は、地獄の苦しみから解放された亡者が喜ぶ様子を再現しているともいわれています。

このように、実は盆踊りは日本の宗教観と結びついた行事でもあるのです。

ちなみに、お盆の起源はハッキリとは分かっていませんが、8世紀の日本には既に風習として存在していたといわれています。

盆踊りのPoint

  • お盆の時期はご先祖様の霊が帰ってくる
  • ご先祖様を迎え入れるための風習行事
  • 盆踊りは8世紀の日本には既に存在していた

精霊馬

画像:精霊馬

お盆の時期になると目にする機会が増える「精霊馬」

キュウリとナスで造られた置物は「牛」と「馬」を表しており、お盆に帰ってくるご先祖様を迎え、見送る役割を担っているといわれています。

馬のスピーディーなイメージはご先祖様を迅速に向かい入れることを示し、逆に牛のオブジェクトはご先祖様ができるだけゆっくりあの世へ戻っていく願いを暗示しているそうです。

また、精霊馬はご先祖様が豊作をもたらすとの意味も込められていると言われています。

精霊馬Point

  • 牛と馬をモチーフにしている
  • ご先祖様を迅速に向かい入れ、ゆっくりと見送る意味合いがある
  • ご先祖様が豊作をもたらすとの意味が込められている

人形供養

画像:日本人形

よく人形には、「人の念や感情が宿ることがある」と言われていますが、そんな人形を供養する儀式、「人形供養」が存在します。

いわくつきの人形や、長年大事に使ってきた人形を供養してくれるお寺が日本各地に点在しており、東京でもこのお祓いの儀を行っているお寺があるのです。

そこでは毎月様々な人形が運ばれてくるのですが、こけしや某遊園地で売られているぬいぐるみ、髪で顔が確認しずらい大型犬の人形など、その種類は多種多様です。

お祓いの内容は非常にシンプルで、人形供養に参加された方々の前でお坊さんがお経を唱え、後日火葬を行うといったものです。

もし今まで大事にしてきた人形を捨てられなかったり、いわくつきのオブジェクトなどを拾ってしまった場合は、是非人形供養をされてみてはいかがでしょうか。

人形供養のPoint

  • 念などが宿った人形、捨てられない人形を供養するための儀式
  • 今でも人形供養を行っているお寺や神社がある
  • 基本的にはお経を唱え火葬して供養される

盛り塩

画像:盛り塩

日本の有名な風習の一つ「盛り塩」

かつての日本では、塩は非常に貴重な品であり、さらに不思議な力を持つとも言われていました

例えば、塩は食用以外にも下記のような風習や行事、厄除けにも使用されています。

  • お葬式の後に塩を体に振り撒く
  • 室内に「盛り塩」を設置する家庭
  • 昔は亡くなった人の身体に塩を撒いた(腐敗、伝染病を防ぐため)

現代では、一般家庭でも八角形の盛り塩を玄関に設置しているケースなども多く見受けられますね。

八は「末広がり(徐々に広がる形)」という言葉を表しているらしく、縁起の良い形として使用されているそうです。

盛り塩のPoint

  • 古来から塩は不思議な力を持つと考えられていた
  • 現在でも様々な風習や行事に使用されている
  • 八角形の盛り塩は、「末広がり」という言葉を表している

イタコの口寄せ

日本には古代より様々な霊媒師が存在していました。

沖縄のシャーマンや東北のイタコは、現在でも有名ですね。

中でもイタコの霊媒師は、青森県のスピリチュアルスポットとして有名な「恐山」にて年に数回、死者の霊を呼び出す行事「イタコの口寄せ」を現代でも行っているのです。

画像:恐山
イタコの口寄せが行われる青森県・恐山

これは現代に呼び戻したい死者の魂をイタコと呼ばれる巫女に憑依させ、会話する場を設けてくれるといった行事です。

恐山は名前の通り、様々な霊が集まる場所としても知られており、心霊現象が頻繁に起こる場所としても有名なのです。

そんな恐山で行われる「イタコの口寄せ」ですが、一般のお客さんでも参加可能がですので、興味のある方は一度体験してみてはいかがでしょうか。

イタコの口寄せのPoint

  • 東北地方に存在する霊媒師
  • 死者の魂を憑依できる
  • 年に数回、恐山にて口寄せの行事が行われている

お地蔵さま

画像:鋸山のお地蔵様

日本中いたる所に置かれている「お地蔵さま」(別名・地蔵菩薩)

仏教の世界では、釈迦と呼ばれる神様が消滅した後の遠い未来(52億7000万年後)に弥勒菩薩(みろくぼさつ)が現れ、人々を救うと言われています。

画像: 絹本著色弥勒菩薩像

重要文化財・絹本著色弥勒菩薩像

現在日本中に設置されているお地蔵さまは、弥勒菩薩(みろくぼさつ)が現れるまでの間、代わりに人々を苦しみから救い、正しい道へ誘う存在であると言われています。

ちなみに、日本のお地蔵さまは地域によって特色が異なります。

画像:鋸山の東海千五百羅漢像
①千葉県・鋸山の「東海千五百羅漢」・日本最大級1,553のお地蔵さま
画像:鋸山の首無し地蔵
②明治時代の宗教運動によって変わり果てた「首無し地蔵」
画像;爪切り地蔵
③神奈川県・大山の爪で彫られた「爪切り地蔵」

などなど、様々なスタイルのお地蔵さまが存在します。

特に千葉県・鋸山では、①、③の特徴的なお地蔵さまが設置されているので、その痕跡を辿ることができます。

関連記事:これぞ地獄の景色…鋸山の観光スポット8選が壮大すぎた・東海千五百羅漢などを解説

この他にも、日本には特色のあるお地蔵さまが数多く存在しますので、よく観察してみると新しい発見があるかもしれません。

お地蔵さまのPoint

  • 52億7000万年後に現れると言われている弥勒菩薩(みろくぼさつ)
  • その間に人々を苦しみから救うのが「お地蔵さま」
  • 千葉県・鋸山などでは多種多様なお地蔵さまが観れる

積み石(賽の河原)

画像:積み石

河原などで石を高く積み上げる遊びを、子供のころに一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

実は積み石の起源を辿ると「賽の河原」の伝説が非常に強く影響しているのです。

賽の河原とは、あの世にある場所といわれており、親より先に亡くなってしまった子供が、親不孝者として苦行を受ける場所として知られています。

その苦行とは物凄くシンプルなもので、河原で石を積み上げていくだけです。これが親への供養になると言われてます。

画像:賽の河原
賽の河原

しかし、途中で鬼が積み上げた石を崩しにくるため、「積み上げては壊され」を永遠に続けることになります。

そんな子供達は「地蔵菩薩」と呼ばれるお地蔵さまによって救われると言われています。

そして先程ご紹介した恐山境内の西側にも「賽の河原」と呼ばれる場所が実在し、そこには今でも実際に積み石が置かれていると言われています。

積み石のPoint

  • 元々の起源は「賽の河原」伝説
  • 親より先に亡くなった子供が受ける苦行が「積み石」
  • 子供達は地蔵菩薩(お地蔵さま)によって救われる

墓食べ(青森県)

画像:日本のお墓

日本には様々な供養や行事が存在しますが、青森県の「墓食べ」は全国的にみても非常に珍しい民俗学的風習の1つといえます。

東北や九州地方では、お盆の際にご先祖さまのお墓で食事をする風習があるらしく、これは「先祖の霊と一緒に食事をする」という意味が込められているのです。

青森県平内町(ひらないまち)などでは、現在でも「墓食べ」を行う風習があるといわれています。

墓食べのPoint

  • 先祖の墓の前で食事をする風習
  • ご先祖様と一緒に食事をする意味になる
  • 青森県の一部地域では、今でも行われている行事

町中の鳥居

画像:町中の鳥居

神社ではなく、町中でよく見かける「小さな鳥居」

日本では、鳥居は神様の通る道といわれており、特に京都の千本鳥居や明治神宮の巨大な明神鳥居(木造)など、神社によってそれぞれ特色が異なります。

しかし、町中で見かける鳥居には「不法投棄」や「犬の糞の処理」などを心理的に防止する効果があるといわれています。

画像:町中の鳥居02
トンネルの横に設置された小さな鳥居

これは「鳥居」=「厳格・神聖・神」といったイメージが既に日本人の中に根付いている為、不法行為の抑止力となっているとも考えられます。

というのも、神社などで信仰されている「神道」は日本の文化、生活、宗教観などの様々な価値観に影響を与えてきましたので、潜在的に神社や鳥居に厳格なイメージを持つのも不自然ではありません。

ちなみに、元々神社が立っていた場所や神域、訳ありの土地などにも小さな鳥居を設置するケースなどもあるそうです。

町中の鳥居のPoint

  • 不法投棄などを心理的に防止する役割がある
  • 神社跡や訳ありな場所にも設置されるケースがある

闇市

画像:闇市の様子

風習とは少し異なりますが、戦後の日本に存在していた「闇市」

戦後は食料の配給不足やタバコなどの流通量が厳しく制限されていため、それらを闇物資として取引していました。

画像:闇市の様子02
 国立民族学博物館に展示されているタバコ売りの模型

中には、生活のために物資の運び屋として動く者がいたり、さらには一般的なお店でも違法な価格で品物の売買がされていたとも言われています。

ちなみに、闇市は都心部を中心に様々なお店が出店し、その集合体のことを指したそうです。

闇市のPoint

  • 戦後の日本における食料配給の不足や規制がきっかけ
  • それらを補うために生まれたのが闇市
  • 政府の定めた基準を上回る価格での取引が行われていた

カエルの置物

画像:カエルのオブジェクト

日本の由緒ある神社などで見かける「カエルの置物」

日本では、「帰る」「買える」「迎える」「若返る」などの言葉に「かえる」という文字が入っていることもあり、幸運を招く動物としても認知されています。

そのため、現在では一般家庭でも室内にカエルの置物を設置する光景が、時々見受けられますね。

また、カエルのオブジェクトは長野県の「四柱神社」や、平将門の怨念により建てられた「平将門の首塚」などでも確認できます。

画像:四柱神社前のカエルの置物
長野県・四柱神社前に設置されたカエルの置物
画像:東京・平将門の首塚
東京都・平将門の首塚

平将門の怨念は今も存在する…東京の最恐スポット「将門塚」を調査してきた。歴史も併せてご紹介

ちなみに、カエルは南米などの地域でも、幸運を招く動物として家に置物が設置されるケースがあるといわれています。

カエルの置物のPoint

  • 「かえる」という言葉自体に様々な意味がある
  • 縁起のいい言葉として知られている
  • 南米の一部地域でも幸運を招く動物として認知されている
  • 神社や一般家庭などにも設置されている

日本の不思議な風習・行事まとめ

以上が日本に伝わる面白い民俗学、地域に残る風習についてでした。

このページはこれからも定期的に更新していく予定ですので、時間を置いて再度チェックしてみて下さい。

またこのサイトでは、今回のような民俗学的トピックを多数ご紹介しているので、別の記事も是非お読み下さい。

関連記事:【左甚五郎】300年生きた伝説の職人とは?彼の彫刻作品・ゆかりの地を解説