山梨県の観光名所といえば、富士山や鳴沢氷穴、河口湖、そして忍野八海と呼ばれる美しい観光スポットが点在しています。
特に忍野八海は、古くから富士山信仰と強い結びつきもあり、多くの伝説が残る人気観光スポットとして知られています。
今回は、そんな「忍野八海」の歴史や見どころ、アクセス情報などを詳しくご紹介したいと思います。
忍野八海の歴史と特徴
忍野八海は富士山の地中に流れ込んだ水(伏流水)が通っており、その名の通り8つの湧き水が溢れ出る湧水池となっております。
その希少性により、1934年に国の天然記念物として登録され、また1985年には 「日本の名水百選」にも選定されました。
さらに、2013年に富士山が世界遺産に登録されたことをきっかけに、「富士山の価値を担う文化財の一つ」として、構成資産としても認知されているのです。
また、湧水池以外にも水車や伝統的な建物も存在し、周辺の「おしの公園」付近からは縄文土器などが出土しているため、その歴史の深さも伺えますね。
富士山信仰と忍野八海
昔の日本では富士山へ巡礼し、神仏の霊力を得て、「一度死に生まれ変わる」という信仰(擬死再生)がありました。
他にも富士山信仰は「富士講」と呼ばれる形で、江戸時代に関東圏の一般人の間でも民間信仰として広まりました。
ちなみに、この時に江戸でも富士山のご利益をいただける場として、鳩森八幡神社に「富士塚」と呼ばれるスポットが生まれたりもしました。
関連記事:【鳩森八幡神社】富士山と同じご利益?鳩森八幡神社の見どころを解説
そして富士山への参拝者が禊を行った場所こそが、この忍野八海の湖沼であったため、別名「富士山根元八湖」とも呼ばれていたのです。
忍野八海の見どころ10選
忍野八海の概要がわかった所で、今度はその観光スポットについて解説したいと思います。
先程も少し触れた通り、忍野八海内には8つの池が点在しており、それぞれが異なる特色と伝説を持っています。
さらに、それに加えて「浅間神社」や、お土産屋さんなども充実しているため、山梨・河口湖周辺の観光スポットの中でも非常に高い評価を得ている名所となっています。
ここからは、そんな忍野八海を観光するうえでの見どころや魅力を詳しく解説していきたいと思います!
一番霊場・出口池(でくちいけ)
1番霊場として知られる「出口池」は、忍野八海の湧水地の中で圧倒的に広い面積を誇ります。
周囲は緑豊かな自然に囲まれ、隣には三重に建てられた鳥居と古い神社が建てられているため、非常に神聖な空気をかもし出している印象を受けました。
ちなみに、忍野八海内にある出口池以外の七つ池は、少しカーブを描いた形で並んでいるため、それらは北斗七星を表すといわれています。
しかし、この出口池は唯一他の池と離れた場所に位置しているため、「北極星を意味する池」といわれているのです。
出口池の伝説
先ほどもお伝えした通り、富士山参拝をする修行者たちが出口池の水で禊を行い、穢(けがれ)を払ったといわれています。
そして、この水を持って富士登山に挑めば、無事に登れるという言い伝えもあることから、「精進池」とも呼ばれていたそうです。
辺りはかなり静かな場所となっており、付近の桂川と呼ばれる川の水源となっているそうですが、他の池からは少し距離がありますので、一番最初か最後に訪れることをオススメします!
こちらの池のご祭神は、サンスクリット語で「歓喜」を意味する難陀竜王(なんだりゅうおう)で、適当な時期に雨を降らして農人などの百姓を喜ばせると言われています。
出口池のPoint
- 忍野八海でもっとも広い面積
- 北極星を表す配置
- 富士登山者への禊の場として使われていた
二番霊場・お釜池(おかまいけ)
出口池とは相反して、忍野八海で最も小さな池でもある「お釜池」。
その由良は、窯の中で熱湯が沸騰するように湧き出ているように見えたことから、「お釜池」と名付けられたそうです。
その名残か、一部だけ底が深い箇所があり、今でも非常に澄んだ色をした池となっています。
お釜池の伝説
お釜池には、かつて巨大なガマガエルが出現し、池のほとりで洗濯をしていた娘を引きずり込んだという伝説が残っています。
村人により娘の捜索は行われましたが、不思議なことに池からは何も見つからなかったと言います。
その後、娘の姉妹と老父はこの池のほとりで娘を思い続けたと語られています。
ご祭神はサンスクリット語で善歓喜という意味をもつ「跋難陀竜王(ばつなんだりゅうおう)」で、出口池の難陀竜王と一緒に国を守るといわれています。
釜池のPoint
- 忍野八海で1番小さな池
- 窯で湯が沸騰しているように見えたことが名前の由来
- 巨大ガマガエルの伝説がある
三番霊場・底抜池(そこなしいけ)
周りを樹木に囲まれた「底抜池」
こちらは今現在、付近の資料館(有料)を通り抜けなければ到達できませんが、自然と一体化したような幻想的な風景が楽しめます。
底抜池の伝説
昔は川や池で洗い物を行うことが一般的でしたが、この底抜池でそれを行うと、神の怒りを買うといわれていました。
というのも、洗い物の最中にうっかり手を離して落とし物をすると、それらは池の渦へと消えていき、最終的にはお隣のお釜池から浮上したと言います。
当時の村人は、これを神様の祟りと考えたそうです。
底抜池のPoint
- 自然に囲まれた池
- 資料館を通る必要がある
- かつて神の祟りが起きた伝説がある
四番霊場・銚子池(ちょうしいけ)
忍野八海の川沿い脇に位置する「銚子池」
薬剤やお酒を造る際に用いる銚子の型に似ていたことから、このような名前となったそうです。
実際の池は川沿いの一角にあり、周りを草木で囲まれているため、非常に静かで落ち着いた雰囲気をかもし出しています。
銚子池の伝説
銚子池では、かつてとある花嫁が身投げをした伝説が残っています。
結婚式の最中、花嫁が大きなオナラをしてしまい、あまりの恥ずかしさに式を飛び出し、この銚子池で身投げを行ったそうです。
現在はその面影もなく、むしろ「縁結びの池」として親しまれているそうです。
ご祭神は、九頭という意味をもつ「和脩吉竜王(わしゅきつりゅうおう)」で、日本では九頭龍大神という名前で、このサイトでも以前ご紹介した「戸隠神社」の九頭龍社でも祀られています。
関連記事:地元民が本当におすすめする【長野市の観光スポット11選】長野市の秘境スポットとは?
銚子池のPoint
- お酒や薬を入れる銚子の型をしていたことが名前の由来
- 花嫁が身投げをした伝説がある
- 日本各地に伝説が残る九頭龍(和修吉)が祀られている
五番霊場・湧池(わくいけ)
忍野八海の中央辺りに位置する「湧池」
出口池ほどてはないですが、地下からの湧き水の量も多く、忍野八海の中では比較的大きな池となっています。
こちらの水は、1983年にアメリカのNASAが宇宙空間で雪を人工的に造る実験を行った際に、スペースシャトル・チャレンジャー1号に積まれて使用されたそうです。
湧池の伝説
かつて富士山の噴火が起きた際に、人々は下記のような悲劇に会い、救いを求めたといわれています。
- 燃えるような熱
- 喉の乾き
- 建物の火事
そんな人々の声を聞いたのか、天から木花咲耶姫(このはなさくやひめ) という神様が救いの手を差し伸べたそうで、その時この湧池に水が吹き出してきたそうです。
それが現在の湧池の名前の由来となったと言われています。
ご祭神は視毒という意味の「徳叉迦竜王(とくしゃかりゅうおう)」で、怒った状態で人を睨むと、その人は息絶えるともいわれています。
湧池のPoint
- 忍野八海の中でも湧き水の量が多い池
- 湧池の水はNASAのスペースシャトルに積まれた事がある
- 富士山噴火時の伝説が名前の由来となっている
六番霊場・濁池(にごりいけ)
湧池の近くに位置する「濁池」
かつては汚く濁った池だったそうですが、現在は井戸水が通っており、また僅かながらに湧き水も出ているため、大変キレイな景観となっています。
濁池の伝説
かつてこの池を訪れた貧相な姿をした修行者が、住民に下記のようなお願いをしたそうです。
「水を一杯欲しい」
しかし、このお願いを断ったところ、水が濁ってしまい、皮肉にもこの池は「濁池」と呼ばれるようになったそうです。
こちらのご祭神は土地に恵みを与えるといわれている「阿那婆達多竜王(あなばだったりゅうおう)」とされています。
濁池のPoint
- かつては濁った池だったらしい
- 現在は井戸水も通るほどキレイな池に変わった
- 池が濁るきっかけになった修行者の伝説が残っている
七番霊場・鏡池(かがみいけ)
忍野八海の最南端にある「鏡池」
この池では富士山が鏡のように反射して見えたことから、そう呼ばれるようになったと言われています。
鏡池の伝説
鏡池には「善」と「悪」を判別する不思議な力があると語られています。
その為、かつては周辺地域でいざこざが起こった際には、人々はこの池の水で身を清め、祈りを捧げたともいわれています。
鏡池のPoint
- 富士山が反射して見えることが名前の由来
- 「善」と「悪」を見分ける力があったと語られている
- 村で問題が起きた時は、この池で禊を行った
八番霊場・菖蒲池(しょうぶいけ)
忍野八海最後の池でもある「菖蒲池」
こちらはかつてショウブの花が咲いていたことから、そう名付けられたそうです。
現在は菖蒲の花は見当たらず、その面影はほとんどありません。
菖蒲池の伝説
菖蒲池は病魔を退ける力を持つといわれており、それに関連した伝説が残っています。
かつて菖蒲池の近くにとある夫婦が住んでいましたが、夫が肺病にかかってしまったそうです。
妻は夫の病が治るためならと様々な努力をしましたが、効果が出なかったため、この菖蒲池にて祈祷を行ったそうです。
池で身を清めお祈りをすること37日、妻は下記のようなお告げを聞いたそうです。
「この池の菖蒲を夫の体に巻けば、病魔を退散させることができる」
その後、神様のお告げ通りに行動すると、次第に夫がの体調は回復していったそうです。
ご祭神は人々に安らぎを与えるという「優鉢羅竜王(ウハラカりゅうおう)」で、サンスクリット語では青蓮華という意味を持つといわれています。
菖蒲池のPoint
- かつては菖蒲(ショウブ)の花が咲いていた池
- 病魔を退ける伝説が残っている
中池
忍野八海内にある8つの池とは異なりますが、「中池」と呼ばれる美しい池も見どころのひとつです。
中池は水深7mの湧水池となっており、忍野八海にある他の池にも通じているといわれています。
また、他の池に比べても青く透き通った景観となっており、魚も生息できるほど非常にキレイな様子がうかがえます。
こちらはお土産店を通って行くことになりますので、そちらも併せて訪れてみてはいかがでしょうか!
浅間神社(せんげんじんじゃ)
忍野八海の奥にて鎮座している「浅間神社」
こちらは今から約1200年前の西暦807年に創建されたといわれていますが、境内はその壮大な時間を感じさせないほどキレイに整えられています。
境内には、村の重要文化財に指定されている本殿を始め、富士山神輿や鬼瓦などを展示する宝物殿なども併設されています。
また、以前別の記事でもご紹介した長野県の諏訪から勧請された「諏訪神社」なども建てられており、他の神社からの信頼も厚いと見えます。
ちなみに、浅間神社では結婚式や命名のご祈祷を行うことも可能で、良縁や金運、安産、厄除などのご利益を頂けるそうです。
浅間神社の天然記念物
境内では、高さ約20メートルほどの巨大な樹木が連なっていますが、こちらは県の天然記念物でもある「イチイの群集」で、季節毎にキレイな色合いへと変化します。
また、村の重要文化財に指定されている「大ケヤキ」も境内の裏側にて見ることができます。
高さ約37メートルの大ケヤキは非常に壮大で、夏は濃い緑色に、秋は幻想的な紅葉へと様変わりします。
境内の建物だけでなく、これらの自然も見どころの一つですね。
国指定重要文化財「浅間神社三神像」
浅間神社には、国の重要文化財にも指定されている「浅間神社三神像」がご神体として祀られています。
これらは「石見防静存」という仏師(彫刻家)により、1,315年に制作されたました。
その内容としては、鷹飼(たかがい)、木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)、犬飼(いぬかい)と呼ばれる人物たちが座った姿で描かれており、長い時間の経過と共に古風な色味へと変化していきました。
富士山麓最古の貴重な優作ともいわれておりますが、こちらは残念ながら一般の方は見学することができませんので、ご注意ください。
とはいえ、浅間神社は非常に見どころ満載の観光スポットですので、忍野八海に訪れる際はぜひともお立ち寄りください!
浅間神社のPoint
- 約1200年の由緒正しい神社
- 金運や良縁、厄除、安産などのご祈祷やご利益
- 県・村の天然記念物が豊富
- 国の重要文化財も安置されている
忍野八海へのアクセス
忍野八海へのアクセスは、車か公共交通機関(電車・バス)を使う方法が挙げられます。
もし、東京から電車・バスをご利用される場合は、下記のように少し複雑な方法でのアクセスとなります。
公共交通機関を使ったアクセス
● 新宿駅から電車を使う場合
→新宿駅 JR中央線中央特快・高尾行き 乗車
→高尾駅 下車(約50分)
→高尾駅 JR中央本線・大月行き 乗車(約35分)
→大月駅 富士急行・河口湖行 下車(約52分)
→富士山駅 下車
乗車時間 約2時間25分 電車乗り換え 2回 運賃合計2,381円
●富士山駅からバスに乗り換え
→富士山駅 忍野八海経由御殿場駅行 乗車(約35分)
→忍野八海入口駅(浅間神社付近) 下車
→忍野八海中池まで徒歩2分
運賃 430円
忍野八海 まとめ
以上が忍野八海の歴史と観光名所の見どころについてでした。
忍野八海は河口湖からも程近く、周辺の歴史や富士山の偉大さを再認識できる素晴らしい観光名所ですね。
しかし、山梨県には他にも鳴沢氷穴・富岳氷穴などの壮大な観光スポットが点在していますので、興味のある方は下記の記事もチェックしてみて下さい!