井の頭公園内に「彫刻園」と呼ばれる場所があることをご存知でしょうか?
ここには彫刻界の匠「北村西望」による数々の作品が展示されているのです。
長崎県の「平和記念像」と言えばピンとくる人も多いのではないでしょうか?
今回はそんな偉大な彫刻家「北村西望」の作品を掘り下げていくと同時に、井の頭彫刻園をより楽しむ情報をお届けいたします!
彫刻家・北村西望とは?
皆さんは日本のアートと言えば何を思い浮かべるでしょうか?
日本には「漆塗り」や顔料を用いた「日本画」など多くの芸術作品が存在しますが、実は彫刻作品も注目されるべき分野の一つであるのです。
先ほどお伝えした通り「北村西望」は近代日本彫刻界の革命家でもあり、彼の作った業績は計り知れないと言っても過言ではないでしょう。
長崎県出身の北村西望は、東京美術学校彫刻科を卒業した後、数々の作品を世に送り出してきました。
例えば北村西望の作った彫刻は、下記のように様々な観光スポットにて設置されています。
北村西望の作品
・東京都 武蔵御嶽神社「畠山重忠像」
・長野県 諏訪大社「馬神」
・北海道 常盤公園「永山武四郎之像」
・広島県 中央公園「常盤公園」
などなど、彼のアトリエが存在する井の頭公園内はもちろん、日本全国にてその痕跡を辿ることができます。
特に東京の御岳山山頂に設置されている「畠山重忠像」は素晴らしい仕上がりとなっていますので、御岳山へ観光される方は是非観てみてください。
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北村西望の作品を見るなら井の頭公園
もし彼の作品をじっくり見たいのであれば、井の頭公園内にある「井の頭彫刻園」ほど最適な場所はないでしょう。
北村西望のアート作品は、今にも動き出しそうな「リアリティー」や「肉体美」などが特徴的ですが、井の頭彫刻園であれば時間を気にせず彼の作品をじっくり鑑賞することができます。
この施設の外でも彼の作品を観ることは出来ますが、施設内はミュージアム仕様になっており、北村西望がこれまでに作り上げてきた作品を隅々まで見学できます。
また、その隣には北村西望のアトリエも開かれており、彼が実際に使っていた道具やモックなども見学することが可能となっています。
北村西望の最高傑作・平和記念像
北村西望が彫刻家として確かな地位を確立した作品「平和記念像」についても触れておきましょう。
平和記念像とは長崎県の平和公園に設置されている、高さ13.6メートルの超巨大彫刻です。
神々しい雰囲気と、見る人の心を奪うかのような壮大な彫刻ですが、修学旅行などで見たことがある方も多いのではないでしょうか?
そんな平和記念像の細かな特徴をいくつか挙げてみましょう。
平和記念像の特徴
・全長13.6メートルの高さ(台座込み)
・重さ30トン
・悲惨な戦争と原爆投下へのメッセージ
・革新的な制作手法
後にご紹介しますが、この平和記念像はなんと井の頭公園内の北村西望のアトリエにて制作され、とある方法を使い長崎に運ばれたのです。
そして井の頭彫刻園内には、その実物と同じスケールを持つモックが置かれているのです。
その再現性の高さから井の頭彫刻園の顔とも言える平和記念像のモックですが、もちろんその制作方法などもアトリエでしっかりと確認することができます。
平和記念像は何を意味している?
北村西望の最高傑作「平和記念像」は、戦争や原爆投下がテーマになっていますが、この姿やポーズは、具体的に何を意味しているのでしょうか?
北村西望が平和記念像を作成する際、彼は以下のような思いを込めたと言われています。
像の柔和な顔は、神の愛と仏の慈悲を、天に向けて垂直に高く掲げた右手は原爆の脅威を、水平に伸ばした左手は平和を、横にした右足は原爆投下直後の長崎市の静けさを、立てた左足は救った命を表し、軽く閉じた目は戦争犠牲者の冥福を祈っている
出典Wikipedia
神聖な雰囲気だけではなく、このような深いメッセージが盛り込まれていることを理解すると、より平和記念像の凄みが伝わってくるのではないでしょうか。
平和記念像の革命的な制作方法
先ほども少し触れましたが、平和記念像は井の頭公園のアトリエにて制作されました。
しかし30トンもあるこの彫刻作品をどうやって1000キロ以上も離れた東京から長崎まで運んだのでしょうか?
それをひも解く答えこそが、「石膏直付け法」と呼ばれる革新的な制作方法でした。
平和記念像の制作工程
①石膏でできた平和記念像を104のパーツに分けて制作
②その後長崎へ輸送
③その後輸送先でパーツを組み合わせる
といった具合に、物凄く高難易度な制作工程を行っていたのです。
この手法により「制作は井の頭公園」、「設置は長崎」といった前代未聞の彫刻造りが行われました。
結果として、平和記念像の制作・設置は成功し、北村西望の平和記念像は今でも長崎県の顔役として人々に親しまれているのです。
ちなみにこの手法は、上條俊介など後の彫刻家たちにも影響を与えました。
長野県松本駅近くに設置されている「播隆上人像」などは、まさに北村西望の石膏直付け法を用いて制作されたと言われています。
井の頭彫刻園へのアクセス方法
北村西望の作品とアトリエは、井の頭動物園にある「井の頭彫刻園」と呼ばれる場所に設置されています。
そこへのアクセスは非常に簡単で、電車で吉祥寺駅に出てしまえば徒歩でも行ける距離にあります。
ボート乗り場がある、従来の井の頭公園とは反対側の「井の頭公園自然文化園」と呼ばれる場所に、動物園と北村西望の彫刻園があります。
また、バスでアクセスする場合は、下記の駅が最寄りのバス停となります。
・吉祥寺発のバス→「文化園前駅」にて下車
・吉祥寺方面へ向かうバス→「万助橋」にて下車
先程もお伝えした通り、井の頭動物園(彫刻園)までは徒歩でもアクセス可能ですので、散歩がてら井の頭周辺を散策してみるのも面白いかもしれませんね。
井の頭公園と北村西望まとめ
以上が井の頭公園にある北村西望彫刻園のご紹介でした。
やはり芸術作品を見る際は、少しでも予備知識があった方が倍楽しむことができます。
この紹介記事で少しでも北村西望と彼の作品に興味を持っていただけたら幸いです。
また、井の頭公園周辺にはショッピングに最適な「吉祥寺サンロード」や多くの雑貨屋さんが点在してますので、そちらも楽しみの1つに数えてもいいかもしれませんね。
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